2009年の映画ミルクの感想です。
アカデミー脚本賞を受賞し、ショーン・ペンがアカデミー主演男優賞に輝いた作品です。
ゲイであることを公表し、公職についた初めてのアメリカ人ハーヴェイ・ミルクの伝記映画です。
採点 4.2/5
あらすじ
まだアメリカで同性愛が認められていなかった時代、金融業界などで働いてきたミルクは年下の男性スコットと恋に落ちる。
2人はサンフランシスコに駆け落ちし、カストロ通りにカメラ店を構え、そこはやがてゲイの聖地になり、ミルクはゲイの権利を得るため選挙に立候補することを決意する…
以下ネタバレあり
冒頭 ミルクは暗殺された時に備えてボイスレコーダーに彼の活動を録音している。
1970年
ミルクは自身の誕生日にすれ違った青年を口説いていた。青年もゲイで2人はともに夜を過ごすことになる。
青年の名はスコット。2人の会話の中でミルクは自分は40歳なのに誇れることを何もしていないと語る。
2人は恋に落ち、ミルクは仕事を投げ出しスコットとサンフランシスコに駆け落ちする。
1972年
お金がなくなった2人は小さなカメラ店を開こうとするが、向かいの店主が彼らがゲイであることから周囲の商人の組合に入れないと言われてしまう。
このことからミルクはゲイの権利を得るため、活動を開始し、やがて店を構えるカストロ通りにはゲイが集まるように鳴る。
逆にゲイに冷たい店は廃業に追い込まれ、警察が来ても怯まず活動は成功を収める。
徐々に仲間が増えたミルクは交友関係を広げ徐々にゲイの権利を勝ち得ていく。
ある夜ゲイバーに警察の一斉手入れが入る。
このことでけが人が出た彼らは国会に自分たちの代弁者があることが必要だと悟る。
1973年
カストロ通りは警察に取り締まられ、安全ではなくなっていた。そんな中ミルクはカストロ通りで演説を始める。
そこで彼は警察を批判し、市議会に立候補することを宣言する。
選挙活動では警察予算の見直しや、マイノリティ支援、税金の使い道を訴える。
やがて彼の元には脅迫めいたものさえも届き始める。それでも彼は金持ちのゲイに話を聞きに行くが、短期間で受け入れてもらうのは無理だと言われてしまう。
ミルクは選挙で敗れた。
しかし当選までわずかに迫り1975年に
再挑戦する。
1975年
清潔感のある服装で立候補するが、敗北。
しかし得票率は上昇した。
1976年
再び立候補し、民主党の議員と一騎打ちになる。ミルクは討論で民主党がゲイが殺害されても犯人を捕まえないと指摘し、会場からは拍手が起こる。
家ではスコットがミルクの選挙の話を拒絶する。スコットはこの選挙に負けたら2人で静かに暮らしたいという。
夜中1人で通りを歩くミルク通りにはかつて選挙に声をかけた少年クリーブがおり、彼の家に入る。
失恋していた彼にミルクはこれから先もっといい男に出会えると告げる。
クリーブはスペインに行った際ゲイたちが警察にゴム弾で打たれても対抗し続ける姿を見て戦うことを決意したと語り、選挙に協力することになる。
選挙には僅差で敗北してしまう。次は勝てると息巻くが、戦う気力がないというミルク。
フロリダの同地区ではゲイの権利を認める条例が廃止されてしまう。
途方にくれるミルクはミネソタの少年から自殺しようとしていると告げられる。少年は親に病院に連れていかれていた。ミルクは彼に君は間違っていないし、どこも悪くない直す必要なんてないと語り、家を出るように進めるが少年は足が不自由で電話を切られてしまう。
通りでは条例廃止に反発する暴動が起きていた。ミルクは暴動を煽り、デモ行進を開始し、公民館まで行進する。
ミルクは活動家としてゲイに権利獲得を訴える公演を行い始め、支持を集める。
彼は同地区から出馬しようとしていたゲイ批判のストークスを抑えるためもう一度選挙に出る。しかし、そのことでスコットとは別れてしまい、スコットは家を出て行ってしまう。
ミルクは新しい選挙マネージャーに、レズビアンのアンを雇い、彼女の尽力で新聞の支持を得る。
その夜事務所に来た青年と一晩過ごすミルク。青年は親に知られ、殴られたと語る。
選挙の結果ミルクは見事当選する。
1978年
ミルクはサンフランシスコ市政委員として職務を開始する。
家では新しい恋人ジャックが勝手に家に入っていた。ミルクは喋りすぎる彼にうんざりしている。
選挙活動では議員の子の洗礼式に赴き協力を得るなどしていたが州の議員からゲイの教師を追放する条例が提示される。
ミルクは自身の集会で条例を破るには州の全土でゲイがカミングアウトしなければ勝てないと語る。ゲイが身近にいる人は反対票を入れるはずだとするミルク。
しかし、スコットはその後ニューヨーク時代ミルクがコソコソ隠れていたことを指摘し、偽善者だと指摘する。
全米の各地ではゲイの立場が悪化している。
反応のデモを起こそうとするが、立場上ミルクはクリーブに先導を託す。
クリーブはデモで交通を遮断するなど被害をもたらす。公民館で彼らを受け入れ暴動を収めるミルク。
ミルクは州の他の地域にも協力し、サンフランシスコのゲイの公民権を勝ち取る。
しかし、州全体でゲイの権利を認めない運動に立ち向かうため他の議員との協力を求められる。
誕生日パーティーの終わり際にダン議員と話すミルク。そこで彼は過去関係を持った3人が自身が隠していたせいで自殺未遂したと語る。そしてこれは命がけの戦いだと語る。
全米が注目するゲイのパレードで演説するミルクに、暗殺予告が来る。しかしミルクは演説するためにマイクを握る。
ミルクは州の議員と直接話し、討論会を開催させる。ミルクは州の議員の論理を的確につき場を盛り上げてみせる。ミルクは議員に自分の権力の誇示のために何人の人のキャリアを潰すのか?何人の人生を潰すのか問いかける。
家に帰るとジャックが壁に大量に張り紙をしている。部屋を開けると孤独に耐えかねたジャックは自殺していた。泣き叫ぶミルク。
ミルクは自分が家に早く帰らずにジャックを放置していたことを嘆いた。しかし、悲しんでいる暇もなかった。
ついに、ゲイの教師を追放するか否かの投票が始まる。戦況は不利だった。すると、一年前電話をかけて来たミネソタの青年から電話が来る。
彼はミルクの活動がきっかけでLAに旅立ち、友人ができもう死にたくないこと。LAで勝利を挙げたことを告げる。
戦況は次第に好転し始め、勝利を収めた。
ミルクは演説で我々は間違っていないし病気でもない。私たちにも居場所があることが証明されたと語る。
ダン議員は急に辞職したものの警察委員会に呼ばれ、急転直下で復職を願い出る。
ミルクはこれに激怒し、今まで自分の案の否決は彼が原因だったと委員長に語る。
委員長はミルクに君は独裁者のようだと語る。
ミルクは夜スコットに電話をかけデートの約束をする。ミルクは穏やかな表情だ。スコットはミルクを誇りに思うと告げる。ミルクは涙ながらにスコットとの関係をなくしたくないと語る。
ダンは記者から再任されない意向を聞く。
納得のいかないダンは公民館に侵入し、市長に面会を求める。ダンは市長に発砲する。
顔面蒼白になりながらミルクの部屋を訪れるダン。ミルクに話があると告げ自分の部屋に呼び出すダン。ミルクにダンは発砲する。
浮かない顔で葬儀にくる仲間たち。
公民館には人が少ない。カストロ通りではクリーブが人を集めている。
彼らはロウソクを持ちながら目に涙を浮かべ行進していた。
ミルクはテープで自分が死んだら1000人もの人に立ち上がって欲しい。それはエゴでも権力でもなく黒人アジア人だけでなく多くの私たち
希望がなければ私たちは諦めてしまう。
しかし希望がなければ人は生きる価値などないと語る。
カストロ通りでは3万人がミルクを市長と呼び行進。ダンは最短で出所することになり、
ゲイ史上最大のデモ行進ホワイト・ナイトが行われた。
ダンは5年後出所し、サンフランシスコに戻り自殺した。
所感
ショーン・ペンは素晴らしい俳優だなと。
これがまずはじめに浮かんだ印象です。
彼の演技力はアイ・アム・サムをはじめとして天才的でナチュラルなんですよね。
全く違和感のない演技が出来る名優です。
では映画の内容ですがこれはもう言わずもがなかなと。内容が内容なので敬遠する方もいるでしょうが素晴らしい映画であることに間違いはないです。
ミルクが最後に語っていた内容ですが、彼は『私たち』という言葉を使っています。
つまり自分だけではないと。自分の身内まで見たときに一番ハッピーになるためには何をしなければいけないのか?それを彼はゲイとして初めて考え、立ち上がったのです。
個人的に一番グッと来た部分は終盤スコットに電話をかける場面ですね。
ミルクはここで初めて弱さを見せます。
どんな人間でも愛する人にそばにいてほしい、自分を愛してほしいという気持ちは変わらないのですねと感じた場面でしたね。