2016年の映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』を見ました!
これまでアメリカの社会問題にユニークな視点で切り込んできたムーア監督。1人で脚本などを担当したコメディ映画です。
採点4.3/5.0
ジャケ写と煽りに比べて物凄いシリアスで勉強になる一作です!!
あらすじ
ある日国防相に代わって世界侵略をすることを依頼される。
引き受けた彼はヨーロッパに向かうことになるが…
以下ネタバレあり
ペンタゴンの陸軍などに第2次大戦後勝てないことを相談されたムーア。
ムーアは兵士達に休息を与えることをアドバイスする。
かつての戦争の映像や問題点が映像で流される。
ムーアはアメリカをより良くするため空母に乗り込んでイタリアに向かう。労働者階級の夫婦に話を聞いて延々とバカンスの話を聞かされるムーア。
イタリアの有給の多さに驚愕するムーア。
企業にも話を聞くことになる。有給は従業員の当然の権利としており、昼食も家に帰って2時間家で過ごすらしい。
バイク会社でも有給を数週間もらえており、強い労働組合があるらしい。しかしその見返りに社員はよく働いて利益を上げていた。
アメリカでは法的に有給がないことを告げられて絶句するイタリア人夫婦。
アメリカは育児休暇も有給ではなく、貧しいパプアニューギニアとアメリカ二カ国だけらしい。
ムーアは有給を8週間もらう姿勢をアメリカに持ち帰ることになる。
次はフランスに向かうムーア。
小学校の食堂の豪華さに驚愕するムーア。子供達と話すが、ドン引きされる。
子供達にどれだけ食事が大事か学ばせるために豪華な食事にしているらしい。
フランス人はコーラもハンバーガーも食べずにアメリカの給食を見せるとめちゃくちゃディスられる。
これらを賄っているのはアメリカ人より少し高い税金で、諸々の費用を含めるとアメリカの方が高くて劣る社会サービスだった。さらに所得税の60%は軍事費に使われていた。
さらにフランスとアメリカでは性教育にも差があり、フランスの10代の妊娠率はアメリカの二分の一だった。
次はフィンランドに向かうムーア。
教育力の高さを誇りながらもアホな競技を生み出してきた国である。
しかし、フィンランドには宿題がなかった。その時間を遊びなどの時間に充てていたのだった。しかし何カ国語も話せるらしい。彼らのテストには選択肢がなく、自分で物事を知らないと答えられないシステムだった。
フィンランドは営利目的での学校設立が禁止されており、全ての学校が同じレベルであった。生徒優先の方針が高い学力をつけていた。フィンランドは子供達の夢の実現にコースを決めて授業を決めていた。
次はスロベニアに向かうムーア。
学費がない国である。たとえ外国人であっても一切の学費を必要としていない。
学費の値上げ時のんびりしていたアメリカと違ってヨーロッパはデモを起こして政府を転覆させていた。
大統領と話したムーアは教育制度の改革をアメリカで目指すことになる。
次はドイツに向かうムーア。
鉛筆工場に向かうムーアはその外見にまず驚愕し、人生を謳歌している彼らに驚く。
メルセデス社は家にいる部下にメールできないシステムをしていた。
彼らはホロコーストによる過去の過ちを繰り返さない教育を徹底していたがアメリカではいまだに差別が横行していた。
ムーアは罪を償う気持ちをドイツから学ぶことになる。
次はポルトガルに向かうムーア。
アメリカに奴隷制度を持ち込んだ国である。コカインなどのドラッグを持っていても逮捕されない。
しかし、麻薬犯罪は減っており、使用者も減っているらしい。
その制度を持ち帰ることになるムーア。警察に人間の尊厳を尊重しなければ犯罪は減らないことを諭される。
次はノルウェーに向かうムーア。
模範囚は囚人でも快適な暮らしをしており、ほとんど野放しにされている。
殺人歴のある囚人も刃物で調理をしており、115人の囚人に対して看守は4人だった。
彼らは友人達に会えない代わりに看守との会話で温かさを思い出していた。
次は厳しい刑務所を見に行くムーア。
そこでも所内で暴行を受けたことはなく、個室にベッド、テレビ、シャワーもある。
ゲームの持ち込みもできてレコーディングスタジオもある。
子供をネオナチに殺された父親はインタビューで相手を殺そうとは思わないと語る。
収監しても物事は良くならず、寄り添うことが大事だと語る。
反対にアメリカの刑務所では囚人を暴行を当たり前のようにしている。
次にチュニジアに向かうムーア。
独裁者を国外に追放した経緯のあるチュニジアは抑圧に対する反対意識が強い。
チュニジアは男女平等を訴えて憲法可決のためにデモをしていた。
可決されると否定していた議員達は総辞職するなど民意を反映してきている。
多くの国はアメリカの文化を知っているが、アメリカ人は自分たちの文化を知らないと批判されてしまう。
次にアイスランドに向かうムーア。
女性の権利主張のため大規模なテロを起こした国である。
女性達が生き生きとしており、バリバリ社会で活躍している。
ムーアは女性達が生き生きしているとみんなが楽しく見えることを学ぶ。
不正をした銀行家達は起訴されて有罪となり、国民に害を及ぼさないように遠くの地へ追いやられていた。
アメリカはチャンスの国ではなく実際には平等に医療や学業のチャンスが与えられていないことを指摘される。
さらに最後のインタビューで、アイスランドの女性に例えお金をもらっても社会システムがなっていなく、同じアメリカ人同士手を差し伸べないアメリカには住みたくないと言われる。
最後にムーアはベルリンの壁の前で冷戦でこんなこと起こると思わなかったこと、マンデラの大統領就任を見て世の中何でもできることを悟る。
そしてこれまで述べてきた様々な国の制度はアメリカを参考にして行われたことであることを語り、アメリカにも力があることを語る。
所感
コメディにタグ付けした奴どこのどいつやねん…
ジャケ写とかから比べて物凄いシリアスな内容です。アメリカがなぜ犯罪率が少ないのか?なぜ欧州諸国と比べて幸福度が低いのか?に視点を当てたドキュメンタリーですね。
この映画を見ていて日本に住んでいる僕は世界観の違いにものすごく気づきました。島国っていうこともあるかもしれないけど、みんな自分のことに精一杯で他人のことに目を向けれないですよね…
働くことが人生の目的になっていることが多く、いつのまにか夢を忘れて社会の歯車の一部になって幸福を忘れてしまう…
この映画を見て強くそう思いました。
だけどムーア監督が伝えたいことはそこじゃなくて同じ人間の欧州人にできてアメリカ人にできないことなんてないよね。これが言いたいことだと思います。
同じことは日本人にも言えて、今の子供達が大人になっていく頃にはもっといい社会になってくれていることを心から願います。